相続発生前後を問わず、様々な紛争の未然防止、紛争解決に対応いたします。
【相続発生前】
1 遺言書作成の効用
ご自身に万一のことがあった場合に、資産をご家族等にどのように承継していくのかについては、遺言書を作成することにより、ご自身で決めることが出来ます。
2 遺言書の作成方法
遺言書を確実に作成し、かつ保管する方法としては、公証役場で作成する公正証書遺言が代表的ですが、公証人に支払う費用が相当程度発生します。
一方、近時、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度が創設されました。この制度を利用すれば、自筆の遺言書について、紛失、破棄、隠匿或いは改ざんのリスクを回避出来ます。また、自筆の遺言書は相続発生時に家庭裁判所における検認という手続が必要とされていますが、この制度を利用すれば、検認手続が不要になります。
3 遺言書作成に際しての考慮事項
遺言の作成に際しては、上記の遺言の作成方法の他、遺言の内容に関して、ご自身の希望、法定相続人等の関係者への配慮を通じた紛争の未然防止、相続税の問題等、複雑な考慮が必要とされることが少なくありません。
具体的には、①誰に、何を、どのような形で承継させるのか、②兄弟姉妹を除く法定相続人が有する遺留分への配慮をどのように行うか、③遺言を作成した本人よりも受遺者が先に死亡した場合の手当てをどのように行うか(予備的遺言の要否)、④生前贈与を併用する必要がないか、⑤遺言執行者を誰にするか、⑥相続税への配慮をどのように行うか、等です。
特に、多数の不動産を所有されていたり、ご自身で企業を経営されているような方については、
不動産や経営する企業の株式の承継方法について、紛争の未然防止、各資産の評価額(相続税の税額の問題)等の観点で、より慎重かつ複雑な検討が必要となります。
4 当事務所によるサポート
当事務所では、遺言の作成業務、遺言執行業務(当事務所の弁護士を遺言執行者に指定することが出来ます。)に多数の経験を有する弁護士が複数在籍しているほか、相続税分野に精通した税理士とも提携しておりますので、ワンストップで、適切なサポートをさせていただくことが出来ます。
【相続発生後】
1 前提となる事項の調査と検討
相続が発生した場合、まず、①戸籍謄本等の収集による亡くなられた方(被相続人)の相続人の範囲の調査、②遺言書の有無の調査、③相続財産(不動産、預貯金、有価証券、動産、債権、債務等)の範囲や④評価額の調査等、前提となる事項の調査や検討が必要になります。
2 遺言書がある場合
(1) 遺言書の検討と対応
公正証書遺言や自筆証書遺言等の遺言書がある場合には、遺言書の有効性(形式の不備や意思能力の具備の有無等)についての調査・検討、遺言書の内容の解釈、遺言書の内容の実現方法の検討(遺言執行者の有無や遺言執行者の選任の要否等)をする必要があります。
遺言書の有効性について紛争が生じた場合には、遺言の無効確認を求め、家庭裁判所での調停の申立てや地方裁判所での訴訟が提起されることとなります。
遺言書で遺言執行者が指定されていない場合で、遺言の内容の実現に遺言執行者が必要な場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てを行うことになります。
(2) 遺留分侵害額請求権についての検討と対応
遺言書がある場合、遺言書の内容が、遺留分権者の遺留分を侵害する内容か否かが検討されます。
遺留分を侵害された遺留分権者は、遺留分侵害額請求権を行使する必要があります。遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ってから1年以内で、かつ、相続の開始から10年以内に行使しないと、時効により消滅してしまいますので、注意が必要です。
遺留分侵害額請求権が行使された場合には、遺留分権者と受遺者(受贈者)との間で話し合いが行われますが、話し合いが付かない場合は、家庭裁判所への調停の申立てや地方裁判所への訴訟提起が行われます。
3 遺言書がないが、法定相続人がいる場合
(1) 遺産分割の協議
遺言書がない場合は、法定相続人により、遺産の分割方法についての協議(遺産分割協議)が行われますが、遺産分割協議では、①相続人の範囲の確定、②遺産の範囲の確定、③遺産(不動産及び株式)の評価額の確定、④特別受益の有無や寄与分の有無の確定、⑤遺産の分割方法(現物分割、代償分割、換価分割(不動産等の財産の任意売却又は競売による分割)等)の確定、が必要となります。
なお、遺産分割協議に際しては、相続税の他、不動産や株式等を売却する場合の譲渡所得税等、税金についての慎重な考慮も必要となります。また、相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内に行うことが必要ですので、申告期限を徒過しないように注意する必要があります。
(2) 遺産分割調停・審判
法定相続人間の話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停・審判の申立て
を行うことになります。
家庭裁判所における遺産分割調停では、上記(1)の①~⑤の順序で、段階的に話し合いが
行われることになります。
但し、①の相続人の範囲について話し合いがまとまらない場合(例えば、被相続人の婚姻又は養子縁組時の意思能力に疑義があり、これらの有効性が争いになる場合)は、一旦遺産分割調停を取下げた上で、まずは地方裁判所における訴訟(婚姻無効確認訴訟や養子縁組無効確認訴訟)でこれらの問題の結論を出してもらう必要があります。
また、②の遺産の範囲について、例えば被相続人の預金口座から多額の出金がなされ、その使途が不明であるため使途不明金につき争いになる等、遺産全体の範囲について合意出来ない場合は、争いのない財産の範囲で遺産であることの確認をした上で調停手続を続行し、使途不明金等の争いのある問題については別途地方裁判所における訴訟で結論を出してもらう必要があります。
更に、③の遺産の評価額について話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所において鑑定人を選任してもらい、鑑定人に評価額を算定してもらう必要があります。
①から③の事項について話し合いがまとまった場合、④の特別受益や寄与分の有無、更に⑤の遺産の分割方法について話し合うことになりますが、調停手続で話し合いがまとまらない場合は、最終的に、家庭裁判所に審判を出してもらうことになります。
4 遺言書も法定相続人も見当たらない場合
(1) 被相続人が生前に遺言書を作成しておらず、また、法定相続人も見当たらない場合(後記5の法定相続人全員が相続放棄をした場合を含みます。)には、相続人不存在ということになりますが、この場合、相続財産は法人化し、相続財産法人が構成されることになります。
(2) このような場合、被相続人に対して債権を有していた債権者や、亡くなった被相続人の近親者で生前に無償で介護をしていた方等は、債権の回収や特別縁故者として財産の分与を受けることを目的として、家庭裁判所に、相続財産の管理人を選任するよう求めることが出来ます。
(3) 相続財産管理人は、遺言による受遺者の有無の調査、法定相続人の有無の調査、相続財産の調査・管理・換価・債務の弁済、また、特別縁故者から財産分与の申立てがなされた場合のその当否の検討を行います。そして、最終的に残った財産については国庫に納付することになります。
5 遺産が債務超過の場合等
被相続人の遺産について、見るべき資産がない一方で多額の相続債務がある場合等は、法定相続人は、家庭裁判所に相続放棄の申述をして相続債務の負担を免れることが出来ます。
相続放棄の申述は、自身のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要がありますので、この期間を徒過しないように留意をする必要があります。
6 当事務所によるサポート
当事務所では、相続関係事件に精通した弁護士が多く在籍しており、また、相続税分野に精通した税理士とも提携しておりますので、ワンストップで、相続を巡る諸問題に対応することが出来ます。